そんなに想われても困ってしまうはずなのに、ちょっぴり嬉しくもある自分は、浅はかな女だな……なんて思う。

今度は寒さではなく、照れ隠しでマフラーに顔を埋めた。

そんな私に、陽介は少し表情を強張らせて、ぽつりと言う。


「今日もしも浅野さんに会ったら、敵視しまくるかもしれない、僕」


……正直だなぁ、陽介は。

でも浅野さんを睨んだところで、何がどうなるわけでもない。


「そんな必要ないよー。向こうは私に気があるわけじゃないんだから」


軽く笑い飛ばす私だけれど、陽介は「……どうかな」とため息混じりに呟く。


「でも、今日はみーちゃんには近付けさせないからね」


口を尖らせてそう言ったかと思うと、彼はコートの袖から出る私の冷たい手を、きゅっと握った。

──トクン、と胸が鳴るけれど、今はときめき以外の何かが邪魔をする。


陽介が腹黒王子の毒牙から守ってくれるのは、とってもありがたい。だから、今日は陽介と講習会に行くことを決めた……はずなのに。

素直に“ありがとう”と言えないってどういうことよ。

ダメだ私、この間からなんかずっと変。自分がどうしたいのか、全然わからない。


混乱したままの心の解決法はまったく浮かばなくて、相談したくても説明すら出来ない。

彼の手を振り払うことも出来ず、「じゃあ、今日は陽介が私のSPだね」なんて茶化しながら、手を繋いだまま歩いた。