「……もしかしてその手法、晴菜にやられた？」

「鋭いっすね」


私にびしっと指差された陽介は、決まりが悪そうな苦笑を浮かべた。

やっぱりそうだったか。実はちょっとだけ気になっていたんだよね、その後晴菜とはどうなったか。


「そっか、あのコいまだに陽介のこと狙ってるんだ」


粘り強いなぁ、なんて妙に感心しながら言うと、陽介からは意外な言葉が返ってくる。


「いや、もう晴菜ちゃんは来ないと思うよ」

「え、何で？」

「今まで『他に好きなコいる』って言い続けても、なかなか引いてくれなかったんだけどさ。『僕、彼女のことが好きで好きで、もうどうしようもないんだ！』ってイタイ奴っぽく言ったら、ようやく諦めてくれたみたい」


イタイ奴っぽいというセリフを、何かの舞台のように大袈裟な調子で言い、最後はニコッと笑う陽介。

その芝居みたいなセリフと言い方がおかしくて、私は失笑しながら脱力した。

他に効果的な断り方はなかったのかなー……。


「“好きで好きでどうしようもない”って……脚色しすぎ」

「そうでもないけどね」


ケロッとそんなことを言って、陽介はふんわりと微笑んだ。

……あぁ、また小さなときめきが胸に芽生えちゃう。