それを眺める彼は、そのままぼそっとこんなことを口にする。


「……これ、僕も行く」

「は?」


予想外すぎる言葉に、私はぽかんとする。

陽介も行くって、何でよ!?


怪訝そうに見やると、彼は少しだけ口角を上げて、用紙に載っている写真を指差す。それに目線を落とした私は、思わず「あ」と声を漏らした。

紙面を彩るラッピングの一つは、クリスマスの定番、ポインセチアの鉢をゴールドのリボンで飾ったものだったから。


「花屋もクリスマスは結構売れるから、ラッピングの機会も増えるし、勉強しとくに越したことはないでしょ」


「それに」と言葉を続ける陽介は、表情を引き締めて私を見つめてくる。


「浅野ってヤツがいるなら、いつまた手出されるかわからないじゃん。……好きな人を野放しにしておきたくはない」


──不覚にも、ドキッとしてしまった。

そんなストレートに好きな人って言われると、ねぇ……。

顔に熱が集まるのを自覚しつつも、私は平静を装って黙々と箸を進めた。

隣では由香がニンマリしながら身体をくねらせる。


「いやーん陽介くん! いーよぉ、今ので胸キュンポイントアップだよ♪」

「……そのRPG的な発言で下がるような気がするからやめて?」


苦笑している陽介だけど、私の胸キュンポイントは一アップしたよ、うん。

陽介と講習会に行ったらどうなるんだろう……とぼんやり思いつつ、少しだけもやが晴れた気分で、それからしばらくブライズでのひと時を楽しんだ。