私の誕生日は、毎年この商店街の近くを流れる川でお祭りが催される。

花火も上がるし、屋台もたくさん出る賑やかなお祭りなのだけど、商店街の人達もそれに協力しなければいけない。

今年はどうやらお父さんにお手伝いの順番が回ってきたようだ。


「その日はきっと遅くなるから、ケーキは翌日に買っていくよ。悪いな」

「いいよ、そんな気にしないで」


いまだにお祝いしてくれるだけで嬉しいんだから。

少しだけ申し訳なさそうにする娘想いのお父さんに、私は明るい笑みを向けた。


「じゃあ、今年は私もお祭り行こうかな」


空になったお猪口に、日本酒を注いであげながら言う。

なんとなく誕生日は家で過ごすのが自分の中で定例になっていたから、実はお祭りはここ最近見ていないのだ。

友達を誘ってみようと考えていると、お父さんは意味深な笑みを浮かべる。


「彼氏と行けばいいじゃないか」


一瞬ピクリと反応したものの、私はすぐにじとっとした目線を送る。


「そんなのいないって知ってるくせに」

「ちょっと探りを入れてみたんだよ。一応これでも気になってるんだからな」


そわそわした感じで言うお父さんが、なんだかちょっと可愛く思えて笑いがこぼれた。