「ちょっと、お客さんからもらって」

「お客さんから? まさか……美玲のファンクラブでもあるのか!?」

「そーいうのじゃないから」


驚愕の表情をするお父さんに、冷静につっこむ。


「ちゃんとしてそうな人だったし、よくわかんないけどもらえる物はもらっとく。飴も好きだし」


まだ怪訝そうな顔をしているお父さんだけど、私はビンから赤いキャンディーを一粒つまみ、口に放り込んだ。

苺の甘酸っぱさが口の中いっぱいに広がって、なんだか懐かしい気分になる。

私がいいことをしたり、泣いていたりすると、お母さんが飴玉をくれたんだよね。

だから、昔から甘いお菓子の中でも特に飴が好きなのだ。


「そういえば、もうすぐ誕生日だな。プレゼントはいつものケーキでいいか?」


手酌をしながらお父さんが言い、私も思い出した。

十月一日は、私の二十四回目の誕生日。

お父さんは毎年この商店街にある洋菓子店で、昔から私が大好きな生チョコケーキを買ってくれるのだ。


「あー忘れてたよ。うん、あのケーキ好きだから嬉しい」

「そうか。でも、今年は屋台の手伝いをやってくれって頼まれちまって」


お父さんは少し白髪が混じってきた頭を、ポリポリと掻きながら言った。