また考え込みそうになってしまうけれど、もう私も休憩時間は終わり。

無理やり思考を切り替え、メールを送信する。荷物をロッカーにしまってエプロンを付けると、阿部さんと一緒に売り場へ戻った。


今日は浜名さんがお休みで、午後はお父さんが外回りに行くと言っていた。

それなりに忙しければ、余計なことを考えなくていいのに……と思っていたのだけれど。


「美玲ちゃん! 見てあれ!」

「え?」


品出しをしていた最中、阿部さんに手招きされた私は、彼女がいる出入り口の方へと向かう。

何故か隠れるようにして外を覗く阿部さんの隣へ行くと、「あれ」と商店街の通りを指差された。

その方向を見やると、さっき出掛けていったお父さんが、誰かと立ち話している。

かろうじて表情がわかるくらいの距離にいるその人は、見慣れたスーツに身を包んだあの男。


「店長と話してるの、腹黒王子じゃないの?」

「そう、ですね……」


嫌な予感しかしないツーショットに、私も阿部さんも眉をひそめる。

お父さんがこちらに背を向けているから、表情はわからない。

けれど、浅野さんにはいつもの余裕そうな笑みはなく、とても真剣な様子なのが窺える。

いったい何を話しているのだろう。やっぱり合併のこと……?