社長って、さっき会った七三分けとお髭がチャームポイントの、感じのいいおじさんだよね。

まさか、あの人の親戚だとは……!

あぁでも、だからあんなふうに軽口が叩けるのか。

驚きと納得とで目をしばたたかせる私に、三木さんはさらに話を続ける。


「経営の専門知識もお持ちなので、彼が必要とされるのは社員の育成だけではありません。仕事が出来るキレ者ですし、まだまだ将来を有望視されている貴重な方です」


やっぱり、浅野夏輝という男はすごい人らしい。

社長の甥っ子となれば、この先かなり上の立場の重役に就くことだって有り得るのだろう。

彼のヴェールが次第に剥がれてきて、自分とは住む世界が違う人のように感じ始めていた時。

それをさらに助長させる一言が、紅い唇から放たれる。


「だから……あなたとは釣り合わない」


──ドクン、と重い音が胸の奥で響いた。

突然そんなことを言われた驚きからか、それともショックからか、はっきりした理由はわからない。

ただ、私は少なからず動揺している。


一方の三木さんは、これまでとまったく変わらない無表情で、段ボール箱のフタを閉めている。

どうして、そんなことを私に言うの?