男性がお店を出ていくと、棚の陰から様子を窺っていたらしい浜名さんが、ぽかんとしたままの私に駆け寄ってくる。


「ちょっとちょっとー! あんな若くてイイオトコ久々に見たわよ」

「あ、はい……ですよね」

「あら? これ、今の人が包んでくれって言ったんじゃなかったの?」


私の両手に収まるプレゼントを見て、浜名さんはキョトンとしている。


「なんか、私にくれるって」

「えぇぇ!? どういうこと!?」

「さぁ、よくわかりません」


オーバーリアクションをする浜名さんに対し、私はプレゼントを眺めて首をかしげるだけ。

包装してくれって頼んだくせに、それを私にくれるってどういうことなんだろう。まったく意味がわからない。

それに、私の名前を知っている理由も……。


「まぁ、いいんじゃない? くれるって言うならありがたくもらっておけば」

「はい……」

「それにしても素敵だったわ~。また来てくれないかしら」


うっとりと頬に手をあてる、楽天的でイケメン好きな彼女に笑いがこぼれた。

……大丈夫だよ、浜名さん。あの人はきっとまた来る。

『また来るよ』という彼の言葉は、何故だか社交辞令ではないような気がするのだ。


彼が出ていったドアの向こうの通りを眺める私の心の中には、言いようのないもやが渦巻いていた。