「今、新しい店やイベントでウチの商品を使ってもらおうと思って、いろんなとこ回ってるんだ。もっと早くにこうやって営業しておくべきだったんだよなぁ」

「もしかして、配達がてら回ってたの?」


神妙な顔で聞くと、彼は肯定するように苦笑を浮かべる。

お父さん、そんなに外回りしていたんだ。知らなかった……。


「なかなかいい声は掛からないが、地道にやってくしかないな」


そう言って笑うけれど、なんだか空元気のように見えてしまう。

お父さんばっかり、大変な思いはさせたくない。


「私も知ってるところに声掛けてみるよ。出来ることなら何でもやるから」


少しでもお父さんを安心させようと、笑顔でしっかりとした口調で言った。

私に声を掛けられるところと言っても高が知れているけど、何もしないよりはいい。

お父さんは、ふっと柔らかな笑みをこぼして、私の頭にぽんと手を置いた。まるで、子供の頃に戻ったみたいに。


「……ありがとな、美玲。でも店のことばっかりじゃなくて、遊ぶ時はちゃんと遊ぶんだぞ」

「え?」


ぽかんとする私。

遊ぶ時は遊べって……どうして今そんなことを。