「コイツを見てるとイライラしてくる……!」


私の部屋のウッドシェルフの棚に、ちょこんと居座る透明なクマさんと目線を合わせて睨み据える。

この可愛いクマにも、中に入っているキャンディーにも何も罪はない。

しかし、見るたびにあの腹黒男のことを思い出して不快な気分になってしまうのだ。

ほぼ毎日一個ずつ舐めていて、もう残りは五粒ほどしかないのだけれど、これを口に入れる気さえ今はなくなってしまった。


昨日、浅野さんの企みを知った時はショックを受けたけれど、逆にこれを力に変えて頑張るしかない。

そう開き直った私は、身支度を整えて一階に下りる。

居間の仏壇の前に正座すると、写真の中のいつまでも綺麗な笑顔のお母さんに向かって手を合わせるのが、毎朝の日課だ。


「……お母さん。大事なものは、ちゃんと自分で守るからね」


マシロを存続させるために、私に出来ることは何でもするから。

お母さんはよく、『私がいない時は、お父さんとお店のことよろしくね』とも言っていたもんね。

その約束も、しっかり守るよ。


改めて心に決めた私は腰を上げ、朝食を用意するためにキッチンへと向かった。