初恋を知った瞬間

「お疲れ様です、泉さん」

「え?」

泉さんは私に気づくと驚いて一歩下がった。

「うわぁ?!」

「そんなに驚かなくても良いじゃないですか?」

「お、驚くさ! 一人で夜遅くここに居るんだから」

「泉さんに用事があったのです」

私は泉さんに紙袋を渡す。

「あの時はありがとうございました。お陰で風邪を引かずに済みました」

「俺のタオルと傘……。別に返さなくてもよかったのに」

「そういう訳には行きません。お借りした物を返さないだなんて」

私がそう言うと泉さんは笑いだした。

「な、何で笑うのですか?」

変なこと言いましたか?

「いや……ごめんね。君は面白い子だね」

「それはどういう……?」

泉さんは私の傍まで来ると髪を優しく撫でてくれました。

「い、泉さん?」

「どういたしまして」

その時の泉さんの笑顔を見て、私の胸が高鳴ったのを感じた。

「ちょっと待っててくれないか? 家まで送るから」

「あ、ありがとうございます」

私は顔を伏せて小さく頷きました。