妻は周りにとても愛されていた。
その証明かの様に葬式に来ていた何十人という人が泣いていた。
私はそんな人たちを優しい目で見る妻の遺影をただじっと見ることしかできなかった。
葬式も終わり、骨となった妻と、こちらを微笑む遺影を家の仏間に置く。
泊まると言い張る子どもたちには帰ってもらった。
いつもこの空間にはもう1人いたはずなのに今部屋には私1人しかいない。
「寂しくなったな…」
「病気なら仕方ないですよ」
そっと小さな声で呟いた独り言に返事が返ってきた瞬間、1人の空間が崩れた。
後ろを振り返ると、襖の側に由美さんが立っていた。
“すみません、インターホン押したんですが、ドアが開いていたので勝手に浸入しました”そう言いながら由美さんは襖を閉めると、私の隣に座った。
2人で遺影をじっと見つめる。
『……なぁ、由美さん』
沈黙を破ったのは私から。
『はい』
『春時という男性は誰ですか?』
『え…?』
隣に座る由美さんを見ると、私が発した“春時”というワードで動揺していることに目にとれた。
『妻は最後に春時という方の名を呟いて亡くなりました。
私はその方が気になるのです』
由美さんの目を真っ直ぐ見て、素直に気持ちを伝えると、由美さんは気まずそうに口を開けた。
『…春時さんは、あの子が誰よりも愛していた方でした』
誰よりも愛していた人?
どういうことだ。
確かに私と妻の始まりは見合いだった。
最初は私も妻もお互いを愛していなかったはずだ、
けれど一緒に時を過ごし、少しずつ愛を育んでこれたと思っていた。
妻も私を愛してくれているのだと思っていた。

