愛せない妻へ。



結婚生活が3年目に突入した辺りだった。



仕事の移動中、自宅に大切な書類を忘れていたことに気づき、

近いこともあって真昼間に自宅に取りに帰宅したことがあった。



私の書斎は玄関からすぐ側の部屋。


書類を手にすると、体は玄関に向かう。


わざわざ顔を出しにリビングなんて寄る気はなかった。


『旦那が不倫してるって分かってるのになんで責めないの?』


その声が聞こえるまでは。


『そりゃ見合いだったからそこは仕方ないかもしれないけど、男なら結婚したら彼女と別れなさいよね』


声の根源は妻の親友、由美さんの者だった。



妻の気持ちが聞ける又とないチャンスに私はバレない様に忍び足でリビングの戸に近づいた。



『いいのよ、こんな私と結婚してくれたんだもの』



妻と由美さんの声しか聞こえない辺り、どうやら2人しかいない様だ。



『だけどね?私があの人の妻よ?

彼女には悪いけど世間からしたら彼女が不倫相手で認められてない立場だもの。

帰る場所がここなら…ここに帰って来てくれるならね…平気よ』


『それって不倫してるのを公認するってこと?』


『えぇ、それにこんな不自由のない生活をさせて頂いているんですもの、責める訳にはいかないわ』


妻の回答は私の中で満点の回答だった。