「拓海!
愛理の話ちゃんと聞いてやれよ!」
「話をするも何も、現に今の状態が物語ってるじゃん」
悲しそうに笑った蒼くんは、それだけ言ってあたし達に背を向けて歩いていく。
「愛理、今追いかけないと取り返しのつかないことになるぞ」
「…っ!
蒼くん!」
拓海の言葉に頷いて、走りだす。
ちゃんと蒼くんに謝るんだ!
嘘をついてごめんなさいって。
「蒼くん待って!
蒼くんっ!」
蒼くんは素っ気なくないんだ。
あたしは1年間も付き合って蒼くんの何を見てたんだろう。
だって、蒼くんは誰よりも優しいじゃん。
あたしが落ち込んでる時は、さりげなく隣にいてくれる。
あたしが泣いてる時は、安心させるように頭を撫でてくれる。
あたしが嬉しい時は、一緒に笑ってくれる。
あたしが怒ってる時は、愚痴を聞いてから、あたしのダメだったところを注意してくれる。
さっきの帰ればってのも、あたしがこれ以上集中できないから、今日はお開きにしようって意味なんだ。
そんな蒼くんのどこが素っ気ないんだろう。
あたしは大馬鹿者だ。

