山口陽菜乃と、山口雛乃。
2人のヒナノは、俺に大事なことを教えてくれた。
雛乃を、俺は守ってあげられなかったから。
陽菜乃のことは、全力で守っていきたい。
今度こそ、後悔したくないから。
「先輩」
「ん?」
「あたし、先輩のこと大好きですよ」
「…ねぇ、陽菜乃。
いつになったら敬語やめて、俺のこと呼び捨てにしてくれるの?」
「……え?でもあたし、後輩ですよ?」
「だから?
環奈ちゃんは後輩だけど、ハルのこと呼び捨てだよ?」
「か、環奈は環奈です」
「俺が呼んでって言ってんの。
陽菜乃、俺のこと名前で呼んで。
あと、普通にタメ口で話して」
「で、でもずっと先輩って呼んでいましたから…」
「呼べなかったら、お仕置きしてあげる」
「お仕置き!?
少女漫画の読みすぎでしょうか?
何だか嫌な予感がシマス……」
「陽菜乃、呼んで。俺のこと」
「せ、せんぱっ……」
「呼ばないんだ。
じゃあ、お仕置きだね」
「せんぱっ……んっ」
俺は陽菜乃の唇を、塞いであげた。
これぐらい、させてね…陽菜乃。
俺は心の中で、笑ったのだった。


