小学生のくせに、私を簡単に拘束できたんだ、コイツ。
泣きながら抵抗したり、謝ったり...。
それでも若王子は許してくれなかったんだ。
後ろから足音がカサッと聞こえて、思わず背中を震わせてしまう。
ただ若王子が近づいただけなのに。
私は反対を向き、川の方を向いた。
そして斜め右方向に彼はいた。
ここ...覚えてる気がする。
私の大事にしていた、兄さんとのお揃いの帽子を...。
若王子は勝手に脱がせ、それを川に捨てたんだ。
あの時小学生だった私は、川に入る勇気がでなかった。
無理をしたら行けるかも知れなかったけど、それは溺れる覚悟をしないといけなかった。
弱虫な私は...悲しみながら帽子がどこかに流れているのを見てるだけだったんだ。


