「なんだよ。
連れていってくれないのかよ」
私のゆっくりとした動作に、やや命令口調で指摘してくる彼。
それに不満に思う私。
「何でそこに行きたいの」
私は若王子と行きたくない。
だってせっかく風磨君と過ごした大切な思い出が、コイツのどうでもいいひとこまに塗り替えられる気がするから。
「もういい」
とまたふて腐れた彼。
男ってこんな単純なことでふてくされるの。
だけど...もう一度行くのも...
いいのかもしれない。
私は黙って若王子を追い抜き、先頭を歩いた。
「どこ行くつもりだよ?」
土手に行く気を見せない私に、不思議がる彼。
「着いてくればわかるよ」


