その変質者とは、意外な場所で再会した。葉月が通うコンビニの真向かいにあるライバル店で、バイトをしていたのだ。僕がそれに気づいたのは、あの事件から数日経って、葉月が好きなアイスを買いに行ったときだった。


「いらっしゃいませ」


「あんた、変質者!」


僕は警戒して、品を棚に返して出ていこうとした。店員の変質者があわてて止める。


「いや、変質者じゃないです。ちゃんと、バイトもしてます、お客さま」


「何がお客さまだ。葉月を見張っているんじゃないのか?」


「うっ……」


「とにかく、あんた、何かしでかしたら、警察に突き出すからな」

「はい……。ところでお客さま、アイスをお探しなんですか?」


僕は、カゴにアイスを入れたまま、声を落として変質者と話していたのだ。


「そうだけど」


「葉月と食べるなら、こちらがおすすめです」


変質者が勧めてきたのは、昔懐かしいアイスキャンデーだった。


「こんな古くさいもの……おしゃれなバニラアイスがいいに決まってる」


「まあまあ、だまされたと思って買ってみてくださいよ」


僕は、変質者の自信にあふれた口調に負けて、アイスキャンデーを二本買った。念のために、自分がいいと思う高級バニラアイスも。


葉月の部屋に行って、コンビニ袋を渡すと、彼女は歓声を上げた。


「わあ、懐かしい!これ、美味しいのよね」


それは、変質者がすすめたアイスキャンデーだった。


「葉月、そのバニラアイスが好きなんじゃなかったのか?」


「うん、もちろんこのアイスも好きだけど、このアイスキャンデーは、昔一番好きだったのよ。今も手に入るなんて思わなかったな」


葉月はよほど嬉しいのか、可愛らしく万歳してみせた。彼女のしっとりした黒髪の向こうに、僕はアイスキャンデーを手に喜ぶ幼い少女を見た気がした。





僕は、帰りに変質者のいるコンビニに寄った。変質者はにこにこしていた。


「あんた、何者だ?」


「俺は修一郎っていいます。葉月の幼馴染みです」


「幼馴染みなら、なぜ葉月に堂々と会わない?」


「会えないんです。事情があって。どうか、俺がここにいることも、葉月には言わないでください。お願いします」


変質者――修一郎は、悲しげな笑みを浮かべて頭を下げた。僕はまだ警戒しつつも、修一郎と葉月の関係が気になりだしていた。