あの日失くした星空に、君を映して。



「はあ!?キス!?」


「風香!声が大きいよ」


窓や玄関を開け放した家の多いこの町ではどこに耳があるのかわからない。


だから少し離れた防波堤で風香に経緯を説明したのだけれど


いくら人がいないからって大声で言われるのは恥ずかしい。


「えぇ……だって本当なん?」


「冗談でこんなこと言わないよ」


「まあ…そんなら深影の様子が変なんも納得できるけどさ」


海の方に投げ出した足をバタバタさせる風香。


夏になったらここから飛び込みをするってクラスの男の子が言ってたっけ。


澄んだ青色がどこまでも続いて、深い藍色になっていく。


少し、こわいな…


「鏡華は深影のことなんも知らんって言ったやん?」


「うん」


「あたしもそんなに知らんのよな」


え?そうなの?


風香なら深影のこと知ってると思ったのに。


だからって風香から聞くつもりはなかったけれど、意外だ。