まつ毛が長いとか、そんなのどうだっていい。
揺れる瞳がゆっくりと細められていくのを見て
「深影!」
反射的に深影を突き飛ばした。
あ………
よろめいた深影は一瞬目を見開いたあと、悲しげに眉を下げる。
どうしよう、今…私…
「深影っ」
「ごめん」
とっさに呼び止めたけれど、深影はそのまま背を向けて走り出す。
路地の多いこの場所では深影の背中なんてすぐに見えなくなって。
スッと体中の熱が冷めていく感覚。
だって、こわかった。
目の前にいるのは確かに深影なのに、深影じゃないみたいで。
あのまま流されていたらどうなっていたかくらい、私にもわかる。
いつもは優しい手なのに、さっきは力が強くて振り払えなかったし
なにより、深影のあの瞳から目を逸らせなかった。
でもあのまま受け入れちゃいけない気がした。



