始業式は午前中だけ。
体育館に移動する途中や休み時間のたびに詰め寄られて、ヘトヘトになった放課後、教室に残るのは私を含めた4人。
「お疲れ」
机の上に伏せる私の頬に冷たい缶が触れる。
オレンジジュース。
「ありがと」
悠然とコーラの缶を開ける深影に言えば、フッと笑って缶を口に傾けた。
「あっ!ねえ、あたしの分は?」
「ねぇよ」
残った私と深影の席に椅子を引いて向かい合う2人。
ツインテールの津崎風香ちゃん。
それと…朝の質問タイムには一切関さなかった工藤幸久くん。
工藤くんは黒髪を跳ね放題に跳ねさせた、なんていうか不思議な男の子。
放課後になると同時に自分の席を離れてこっちに来たから、深影の友達…なんだと思う。
「なにそれ。鏡華には優しいん?」
「俺は誰にでも優しいやろ」
早速名前で呼んでくれる風香ちゃんが私のオレンジジュースを羨ましそうに見てくる。
「飲む?」
「いいん!?なら一口もらおうかな」
可愛いなあ。
オレンジジュースの缶を差し出すと、 一口だけ飲んですぐに返してくれた。
もっと飲んでいいのに。
「ありがとね、鏡華」
「どういたしまして」
深影がくれたものだから私が言うのは変かもしれない。



