「いいなあ…」


1人、ポツリと呟いた時だった。


「なんが?」


誰に宛てた声でもないのに、返事が返ってきた。


「うわっ!?」


誰…?


起き上がろうとした目の前にニョキ、と飛び出してきた顔。


「こんな時間に出歩くもんやないよ」


「え………?」


深いため息をついた彼におでこを小突かれる。


月明かりに透かされた薄い茶髪。


漆黒の瞳に、爛々とした光を持った彼はまるで


夜空みたいな人だと、思った。