けれど返って来たのは予想外の返事。
「さあ?」
大した間も開けずに言い放たれて思わず何度も目を瞬く。
さ、さあ?
聞き間違いなんじゃないかって疑う私の耳に追い討ちをかけられる。
「わからんな、それは」
「えっ………」
どうしよう、泣きそう。
何度も深影の前で泣いたけれど、深影とのことに関して泣く日が来るとは思わなかった。
鼻の奥がツンとしてすぐに涙が溢れそうになるのを眉間に力を込めて我慢する。
絶対に「大丈夫」とか言ってくれるって思っていたから、反動が半端じゃない。
「鏡華は?離れても好きでおれる?」
「ずっと好きだよ!」
出会い方が違ったって好きになってた。
もしも、深影に会えなかったとしたらって考えると離れることなんて大したことないように思えるんだよ。
一生のうちのほんの数年。
その時間をいつか恋しくなる日が来るのかもしれないけれど、離れてる間の時間もちゃんと大事にする。
だから、そんなこと言わないで。
自分でずるい聞き方をしたくせに、深影ばかり責めていいわけがない。
「じゃあちゃんと好きにならせて。これからもずっと」
渦巻く思いの丈をぶつけてしまいそうになった時、グイ、と肩を引かれた。
加わる力に任せて深影の肩に頭が触れる。
「今よりずっと好きにさせて。上書きしてよ、鏡華」
「なに…言ってるの」
「そしたら離れられんけんさ」
意味わかんない。
はっきり言ってくれないくせに、今度は嬉し涙が頬を伝っていく。
「泣き虫だけは治らんな」
「誰のせいだと思ってるの…」
昔は滅多に泣かなかったんだよ。
深影に触れて、簡単に塞き止める物を無くしたみたいにこぼれ落ちるから、堪えられないだけで、泣きたいわけじゃないのに。
ゴツン、と深影の硬い肩に頭をぶつける。



