「聞いとんの?」
「へっ!?あ、聞いてなかった。なに?」
完全に上の空だった、何か言ってたっけ。
首を傾げると、ジトッとした目を向けられる。
「人が怒っとんのに無関心か」
「違う違う!深影のこと考えてたの!」
焦ってとっさに口をついて出た言葉が自分でも信じられない。
「ふぅん」
一転して機嫌が良くなった深影。
もう意味がわからない。
こんな話をしに来たんじゃないのに。
深影に引っ越しの話したら、どうしても聞きたいことがあった。
あの日、お母さんと大谷田さんに向かって宣言したはいいけれど、あれは私の思いだ。
深影も同じように思っていてくれないと、きっと上手くはいかない。
あんなに自信を持って宣言したことを後悔する日が来てしまう。
だから、聞きたい。
「深影は離れても好きでいてくれる?」
ずるい聞き方。
付き合っていてくれる?とは言えなかった。
でも…大丈夫って笑ってくれるんでしょ?



