あの日失くした星空に、君を映して。



*

「誰なん、あの人達」


人の少ない校舎裏の石段に座るとすぐに問い詰められる。


「その……うん…」


いざ言おうとすると言葉に詰まる。


何から説明すればいいんだろう。


いきなり引っ越しするとは言えないし、どうしよう。


「大谷田さんって…鏡華のお母さんと仲いいんやっけ?」


「何でそれ……」


言いかけて気付いた。


私が大谷田さんを知ったのは銭湯での会話がきっかけだ。


深影もその場にいたし、というか話の中に入っていたんだから知っていてもおかしくない。


「再婚するんだって、お母さんと大谷田さん」


「そっか。おめでとう」


「それで翔太くん…あ、大谷田さんの息子さんなんだけど…」


しどろもどろになりながらなんとか説明をする。


肝心の引っ越しの話をする前にだんだんと語尾が薄れていって、深影との間を沈黙が通り過ぎる。


黙ってちゃダメなんだってわかっているけれど、深影が何を考えているのかわからない。


意を決して口を開いたけれど、声は情けなく震えていた。


「引っ越しするの」


消え入りそうになるくらいの小さな声でも深影にはちゃんと届いた。


耳がピクリと動いたのを見逃さなかった。