頬には大きめのガーゼが貼られていて、あの痛々しい傷は覆われていた。
「深影」
固まる深影の傍に立って、見上げる。
私がここに来るとは思わなかったのかな。
それとも、自分がここにいることがバレないと思った?
目の前に来ても何の反応も示してくれないから、顔の前で手を振る。
するとハッと我に返ったように深影が目を瞬いた。
「鏡華…?」
「うん」
「なんで…」
うん、だからそれじゃわかんないって。
ビックリさせちゃったかな、でもそんなに意外だった?
「何だ、みかお前いつの間に嫁ができたんだ」
「はあ!?違うわ!まだ嫁にはもらってねぇよ」
黙って見ていたマツじいがニヤニヤしながら深影をつつく。
まだ………まだ!?
えっ…まだってことはさ、その…
いつかはそういう…うん。
「まだ、な。そーかそーか。まだか」
「揚げ足とんなよ…ほんっとエロジジイが…」
「利子つけるぞ」
「すんません」
そういえば深影ってマツじいに色々ツケがあるんだっけ?
利子がついたらとんでもないことになるってわかってるんだ。
深影が言い負かされるなんて珍しい。



