心配かけたくないし、笑わないと。
そう思ってもう一度笑って見せようとしたのだけれど
あれ……おかしいな。
口角が震えてうまく押し上げられない。
もう一度頬に力を入れようとすると、美里さんの手が私の両頬を包んだ。
「笑わんでいいよ」
真っ直ぐな瞳は心配そうに揺れていて。
風香も同じような顔で私を見ていた。
「深影達のことは全部聞いたけん。ショックかもしれんけど、そんなに気にせんで、な?」
背中をさすりながら優しく言ってくれるけれど、違う。
違うんだよ。
2人が喧嘩をしたことがショックなんじゃない。
なんで?って思った。
いつもと全然違う2人を怖いって感じたし、すぐに間に入ろうとは思えなかった。
でも、でもね。
それ以上に頭の中に張り付いて離れないの。
工藤くんの、血と目が。



