深影はもう私を見ることなく、廊下を歩いて行ってしまった。
それに続くはずの工藤くんがなかなか出てこなくて、教室の中を見ると
「っ…ひっ…!」
左目の周りを腫らした工藤くんがフラリと倒れ込む瞬間を目撃してしまった。
反射的にしゃがみこんで、膝を抱える。
だって…今…
目、赤くなってた…
目の周りが腫れているだけじゃなかった。
薄らと開かれた眼球が真っ赤に充血していたし、頬に血が流れていた。
その瞬間フラッシュバックしたのは、いつかの美和さんの顔でもなければ、打ち付けられた体の痛みでもない。
右目にひどい熱が集まって、燃えるような鋭い痛みが突き抜けたあの感覚。



