あの日失くした星空に、君を映して。



トボトボと休み時間なのに人気がない廊下を歩いていると、違和感を感じた。


なんか…上の階が騒がしい?


階段の上の様子は見えないけれど、何やら叫び声のようなものが聞こえる。


大きな物音もして、ただ事じゃないことを悟った。


急いで階段を上がろうとすると


「あ、戸塚!」


「え…っ!」


慌てて階段を駆け下りる、坊主頭の男の子とぶつかりそうになる。


な、永田くん…?


何がどうなっているのかさっぱりわからなくて、上の階の騒動は何なのか尋ねようとしたのだけれど、それよりも先に永田くんが早口でまくし立てた。


「ごめん!じゃなくて、今うちのクラスで喧嘩があって」


「喧嘩!?だ、誰が…」


喧嘩でこんな騒ぎになる?


おかしいよ。


一体誰が…


考えかけた脳裏に浮かぶ人物。


ううん、違うよね…?


「深影と幸久。血出とるし、俺は先生呼びに行くけん!中には入るなよ!」


全力疾走で駆けて行った永田くんの背中はすぐに見えなくなる。


今…深影って言った?


工藤くんと喧嘩ってまさか…本当に?


信じられなくて、でも否定はできなくて。


血が出てるって言ってた。


サーッと背筋が冷めていくのを感じながら、何とか足を進める。


教室に近付くにつれて、他クラスの人まで廊下に出て騒いでいるのがわかった。


クラスメイトのほとんどが廊下に出ていて、人混みをかき分けて何とか隙間を覗き込むと、そこには


クラスの大柄な男の子数人に羽交い締めにされる深影と工藤くんの姿があった。