あの日失くした星空に、君を映して。



*

ドンドン、と玄関の戸を叩く。


「はいはい…おお?鏡華ちゃんやないか。どうした?そんなにびしょ濡れになって…入りなさい」


ビックリした顔のおじいちゃんが家に招き入れてくれる。


何も訊かずにバスタオルを被せてくれた。


「お母さんは今日も仕事に行っとるんやろ?」


コクン、と頷くことしかできない。


今声を出したら絶対に震えてしまうから。


「この雨じゃあ帰ってこれんかもなあ…最近は雨が多くて困るわ」


俯いて足取りの覚束無い私の肩を押してくれるおじいちゃん。


貸してくれた深影のジャージを着ると、袖が長くて手が出ないし、裾は太ももの辺りまである。


ふわりと香る深影の匂い。


柔軟剤の匂いだけじゃない、深影が普段に着ているものだからこその香り。


それだけでなぜかとても、安心した。