好きって…誰が…
端々にしか聞こえなかった単語が頭の中を駆け巡る。
やがて困惑に変わったそれを自分ではどうすることもできなくて、顔を伏せた。
「…悪い、忘れて」
パシャパシャと水音が遠ざかる。
放心したみたいにその場に佇んで、ようやく顔を上げた時にはもう工藤くんはいなかった。
忘れてって言われて忘れられるようなことじゃないに決まってる。
悲しいとか、そんな感情1つも湧いてこなくて。
冷たい雨に濡れて冷えた体と、ジリジリと熱を持つ目元。
泣きたいわけじゃないのに。
今、どうしようもなく深影に会いたい。



