何とか傘だけは落とさないように持ち手をギュッと握り締める。
でも…それが仇になった。
かがんだ工藤くんの顔が近付いてくるのをよけきれなかった。
ハッとしたときにはもう遅い。
冷たく冷えた工藤くんの唇が、私の唇に重なった。
頭が真っ白になる。
なんで?
工藤くんは何をしているの?
答えのない疑問が浮かんでは、白に溶けていく。
何も、考える余裕がない。
視界の端っこで、地面に落ちた工藤くんの傘がカラリと揺れる。
「や、やめて!」
パシャン、と音を立てて大きな和傘が地面に転がった。
途端に肌に降り注ぐ大粒の雨。
突き飛ばしたせいでバランスを崩した工藤くんがよろめいた後、私を見つめた。



