「大福2層にすればいいんじゃないの」
ジャージに着替えた工藤くんが奥から出てきて、ボソッと言った。
大福を…2層に?
「底の部分だけ2層にして溢れたのが溜まるようにすれば」
見た目には問題があるけど、と深くため息をつく。
びっくりした。
何がって、工藤くんがそんなこと言うとは思わなくて。
普段何にも興味を示さないように見えるのに。
「なに」
「意外だなって…」
ついポツリと正直に言ってしまう。
気分を悪くしたのか、工藤くんは眉根を寄せた。
「別に、僕ここ継ぐし。興味ないわけじゃない」
そうだったんだ。
老舗って名前の通り、このお店は結構な歴史がある。
そんなお店を継ぐって、すごいなあ。
相変わらず表情の読めない工藤くんを見て 、工藤くんのお母さんが小さく笑った。



