抱き締められてると気付いても、突き放そうとは思えなかった。


心地いいくらいのぬくもりに、すがるように額を押し付ける。


深影の肩口がジワリと濡れていくのがわかったけれど、離れたくなかった。


「もしかしてって、思ってたんよ」


「…ん」


私ももしかしてって思ったよ。


あの日、初めて深影の前で泣いたとき。


風香にもまだバレてないのにな。


佐山さんにも言っていないから、誰かに話すのはこれが初めて。


見えないことにも慣れて、眼自体の違和感はほとんどなくなった。


1日に1度、義眼を取り外したときの小さな空洞を見てあるべきものがないことを実感してる。