「あぁ。すごく、大事な奴なんだ」
ズキンって、また痛んだ。
でも必死に隠した。
「昔からの付き合いで、狭いアパートで一緒に住んでたんだよ。ま、もう15年も前の話だけどな。多分、俺が事件なんて起こさなかったら、今でもあいつと……」
幼馴染、みたいな感じかな。
でも同居してたって事は付き合ってたのかな?
「その人って、どんな人なんですか?」
「……綺麗だけど、脆くて壊れやすい奴で、笑った時の顔がすっごいあったかい奴」
また、新たな面を知れた。
彼の事を知れた。
でもこの話、あまり聞きたくなかったかも。
「……そろそろ帰りますね。また来ます」
一方的にそう告げて、天野さんの方を見ようともせず、逃げるように部屋を出た。