「凶悪な奴らばっかりだから、本当に気をつけてね」


「うん」



車を降りて中に入った。


一歩足を踏み入れればそこは、普段私達が生活してる世界とはまるで違う。


別世界。



腐った世界の、入り口……。





「迷子になるなよ?」


「大丈夫だよ。私はもう、子供じゃないんだから」



大丈夫、と言ったにも関わらずお兄ちゃんは私の手を握った。





この時の私は、ただワクワクしてた。



知らない世界を見てみたい。

知ってみたい。



そんな、ささやかな好奇心だった。