「あいつ、無愛想だったでしょ?」
「え、は、はい。そうですね……」
「見た目はそこそこなのに、もったいない奴だよね」
確かに、それは私も思った。
一体あの人は、どんな罪を犯したのかな?
死刑になるくらいだから、相当な事をしたはずだけど。
帰りの車の中。
「あの、桐谷さん」
「ん?」
彼はハンドルを握り締めて、前を向いたまま返事をした。
「あの人の名前、何ていうんですか?」
「あれ、聞かなかったの?」
「聞き忘れました……」
桐谷さんは「そっか」と笑った後、
「また今度来た時にでも聞きな」
と言った。


