『あ、いた……』
俺は自分のバイトが終わってすぐに、明来がバイトしているコンビニへと向かった。
顔が見えないようにニット帽を目深にかぶって、外からこっそり店内の様子を窺う。
店の制服を着て、笑顔で接客する明来に変わった様子は特にない。
やがて明来の勤務時間は終わって、次のバイトの人とレジを交代して、明来は店の奥へ引っ込んでいった。
本当はこんな事、したくなかった。
でも、何も話してくれないなら、こうするしかない。
数分後、店の裏口から出てきた明来を、俺は尾行した。
帰りが遅い原因は何なのか。
絶対につきとめないと。
明来は俺らの住むアパートとは逆方向へと歩いていく。
やはりバイトの後、どこかへ寄り道しているようだ。
適度に距離を置いて、気づかれないように尾行する事、約10分。
明来は小綺麗なアパートに入っていった。
1階の3つ扉があるうち、1番奥の玄関扉を数回ノックした後、ドアを開けて部屋の中へと入って行ってしまった。
部屋の明かりが窓から漏れているので、中には誰かがいるようだ。
帰りが遅い原因はこれか?
新しい友達ができたというのは、本当だったのか?
安心したような、しないような。
モヤモヤとしたまま、すっきりしない。


