【透真side】




「俺と明来が仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。幼いながらも、境遇が似てたからお互いに自然と惹かれ合ってたのかもしれない」


確か、明来と出会ったのは、5歳くらいの時だった。

もう30年も前の事になるのか……。



「18歳で施設を出た後、俺と明来は例のボロアパートで一緒に暮らすようになり、奨学金で大学に通った。しかも、それなりにレベルの高い名門大学」



明来は元々、頭の良い奴だったけど、俺はあまり勉強ができる方じゃなかったから、受験勉強は大変だった。



わからないところを明来に教えてもらって、2人で徹夜で勉強したり、何度も神社に行って「合格できますように」と祈ったりした。


ほんと、あの頃は幸せだったな……。




「天野さん……?大丈夫ですか?」



昔の事を思い出して、感傷的になってしまい、彩菜に心配されてしまった。



「あ、あぁ。大丈夫だ……」


もう、淡々と話そう。

いろいろと思い出してたら、上手く話せなくなりそうだ。



「お互い、大学に通いながら、生活費を稼ぐために必死でバイトもしたよ。他の奴らは親から仕送りしてもらったりしてたから、楽しそうにサークル活動だの合コンだのやってたけど、俺らにはそんな余裕はなかった。生活はカツカツで大変だったけど、でもそれ以上に幸せだった。明来がいたから、がんばれたんだ。バイトをたくさん掛け持ちして、しんどくても平気でいられた」



明来は生まれつき心臓に病気を持っていて、極力無理をさせたくなかった。




俺達は別に恋人同士というわけではなかったが、俺は残りの人生、ずっとずっと明来と一緒にいたいと思っていた。


大学卒業後は給料の良い一流企業に就職して、明来に少しでも楽な生活をさせてやりたかった。