私が、何も知らない?



「雅くんは、何を知ってるっていうの?」


「っ……」


「桐谷さんとの間で何か、あったの?」


「それは……」



隠してる。

雅くんは、何かを知ってて隠してる。


きっとお兄ちゃんも……。



「……ごめん。今日はもう帰るから。とにかく桐谷星夜とは、会わないようにして。あんな奴とは関わらないで」


問いただしたかったけど。
きっと、何も教えてくれないだろう。



「彩菜ちゃん、1つだけ教えてあげる。あいつはね、桐谷は人間のクズなんだよ。あいつのせいで夏輝は、たくさん苦しんだんだから。本当にあいつは、人としてさいってーな野郎なんだよ」


穏やかな雅くんからは、想像もつかないような冷たい言葉を残して帰ってしまった。