その夕方となりオレたちは授業が終わると早々に下校を促された。先生達は慌ただしくて、パイプ椅子やらを体育館へと運んだり、まだ残っている生徒に声をかけたりバタバタとしていた。

部活も勿論なかったのでオレは久しぶりに真緒と良太と一緒に帰路に着いていた。今日は塾や稽古なども自粛するように帰りのホームルームで伝えられていたから、まだまだ日も落ちそうにない時間なのに下向する生徒で通学路が充たされていた。

「真緒は今日は道場顔出すのか?」 そう良太が何気なく聞く。真緒はうーんと唸ってから答えた。

「大会も近いしね……練習したいのは山々なんだけど今日は流石に休む、かな?」
「まぁ、そうだよな……」

あと数時間もすれば学校では記者会見が開かれ、湊と榎本さんの家では葬儀が行われる。きっと誰も悪くないのに悲しみの連鎖が広がっている。それを断ち切れるのはオレだけの様にも思えながらも、ただ無力さに拳を握ることしかできないでいた。

「じゃあ、また来週ね」
「おう、気をつけて帰れよ」