雪貴から直接、今後の生活の仕方や困りそうなことの対処の仕方をきいてから、祥子はまた学生服に着替えていた。


「ほぉ・・・俺は君が女だと知っているから余計にそう思うのかもしれないが、学生服姿もそそられるな。
男装の麗人っていうのも悪くない。」


「雪貴さぁん!なんかわざと楽しんでいるでしょ。」


「あははは。まあね。
あっ・・・いけないなぁ。これは・・・」


「何かおかしいですか?」


すると雪貴は祥子をギュッと抱きしめて、軽く口づけた。


「いやっ・・・は、離してください。」


「勘違いするな。君は甘くていい匂いしすぎだ。
俺が男の匂いをつけておいてやる。

そうしないと寮の連中にまわされてもしらないぞ。」


「えっ!?そ、そんなに甘い香り?」


「俺も兄貴に寮まではいきすぎだろってかなり食ってかかったんだが、君の家のことを探る上でうちにずっとかくまっていてはすぐに見つかってしまうって言われてね。

仕方なく・・・行儀がいいといわれている北天寮への手続きをした。
すまない・・・。」


「気にしないでください。私はここでは人質同然なのでしょう?
私の記憶もまだもどってこないし・・・記憶がもどれば帰れるかもしれないし。

歓迎会までしてもらってそれなりに楽しいかも。
それじゃ、失礼します。」


「ああ、また来いよ。
俺が忙しいかどうか気を遣うな。
君の安全が絶対だからな。」


「はい。ありがとう・・・じゃ。」


祥子は少しドキドキしていた。
記憶はまだもどらないけれど、自分は雪貴にお嫁さんになりたいと告白していた・・・それも1回じゃなく。

(どうして、雪貴さんの記憶までなくなってしまったんだろう?
あんなステキな人と会ったことまで忘れるなんて。)


お風呂も雪貴の家で済ませてきたので、祥子はすぐに明央の待つ部屋へともどっていった。


「ただいま帰りました。」


「親戚に会いにいってたってウソだろ。」


「えっ?本当ですよ。どうしてそう思うんですか?」


「いや・・・べつに・・・なんつ~か・・・もういい。寝ろ。」


「はい、おやすみなさい。」


明央はどうしたんだろう?と思いながらも、いろいろあって疲れてしまった祥子はベッドに倒れるとすぐに眠りに入った。

翌朝から祥子は桧川祥として非力な坊やを演じながらも、何とか学力では上の方をキープしていた。


「桧川クンって体は弱いのに、頭はいいんだね。」

そんなふうにクラスメートにも寮の同級生たちにも言われるようになっていた。