水野の仕事はそれからがけっこう大変な状況に陥っていった。

ちょっと目を離すと、2人は抱き合ってキスをかわしている。

朝、仕事や学校に出かけるときも名残惜しそうな態度に水野は運転手をけしかけることがしばしばだった。



そしてとくに休日には、2人はお弁当持ちで手をつないで、海に山に・・・街にと・・・仲良く出かけてしまうので、水野は部下に監視役を命じなければならなくなったほどだった。



「ねぇ、祥子の結婚式って卒業式の翌日だよねぇ。」


「うん、そのつもりだけど・・・そのあと新婚旅行に行っちゃうとね、卒業旅行に行けなくなっちゃうの。
それでね、雪貴さんに相談したんだけど・・・そしたら、卒業旅行の現地まで私を送ってくれるって。
そしたら、行きの電車には乗れないけど、夜は楽しめるでしょ。」


「ほんと!やったぁ。でも祥子は疲れないかなぁ?
旅行の疲れとかあるんじゃ・・・。」


「若いから大丈夫よ。それに温泉でしょ。
海外からもどってきたら最高の癒しじゃない!」


「すごいね。やったぁ!!」



と、予定はそうだったのだが・・・現実は・・・卒業時には祥子は妊娠5か月に差し掛かろうとしていた。


「というわけで、卒業旅行は俺もついていくからな。」


「ひどぉ~い。雪貴さんは最初からそれ狙ってたんでしょ!」


「そんなことはない。そんなうまくねらってできることでもないしな。
これも神のみぞ知るだ。
予定通り、結婚式と披露宴をやったらタイのハネムーンに行って、ゆっくりしよう。
それからもどってきたら、温泉で癒されような。」


「それは私の予定でしょ。雪貴さんは部下たちと遊びにいくつもりのくせにぃーーー!
悔しい!!!」


「怒らないでくれって。俺は同じ家で祥子と暮らしている以上、何も求めないなんてできないって言っただろう?」


「でも、雪貴さんは先生なのに・・・。」


「違うぞ!俺は雇われの身ではない。経営者だ。
つまり、卒業を待つ理由はない。」


「そんなこと言って・・・教育者がきいてあきれる!」


「あきれてくれ!祥子を愛することに10年以上はもう待てなかったんだ。
旅行も、お産もいっぱい俺を頼ってくれていいぞ。

全スタッフ用意してかまえておくからな。」


「もう・・・なんて人なの。
でも、うれしい・・・。」


「そうか?とにかく、行けるとこまでいっしょに行こう。
ずっとずっと楽しくだ!」


「ええ。」




秘密と記憶が出会うとき・・・・・END