祥子は少し、ムッとしながらオムライスの用意をし始めた。


そして、野菜を切りながらふと・・・考えた。

(10年という間に、雪貴さんは私のことを知らなくて、私も雪貴さんのことは何もわかってなかった・・・んだわ。)



「お待たせしました。
自己流なのでお口にあうかわかりませんけど・・・。


「うん、まぁまぁじゃないかな。
えっ!?」


雪貴はそういって祥子の顔を見上げると、祥子がぽろぽろと涙を流していたので驚いた。


「私、早々に出ていきますから・・・。お世話になりました。」


「ちょ、ちょっと待て!べつに俺はまずいなんて言ってないし・・・。
どうしたっていうんだ?」



翌朝、雪貴は朝ご飯のときに祥子から詳しい話をきいて、泣かせてしまったことは謝らないといけないと思っていた。


しかし、祥子が食堂までやってこないので、祥子の部屋の入り口を慌てて開けた。


祥子の姿はすでにもうなくなっていた。


「うそだろ・・・。」


雪貴はすぐに貴文のところに電話をして、祥子が行っていないか尋ねた。

貴文からは祥子はきていないという返事で、志奈子もいなくなったことに心配した。


「す、すみません・・・俺が悪いんです。
きっと捜し出しますから、捜索願はもう1日だけ待ってください。」



雪貴はそう言い終わると電話をきって、すぐに須藤のところにも電話をいれた。


「俺も捜します!妹にも伝えます・・・あ、あの・・・1つ質問していいですか?」


「何だね?」


「祥子さんのことを好きだっていいましたか?」


「そ、そんなことは君にいう必要がないと思うけど・・・。」


「もし、言ってないなら言ってあげた方がいいです。
彼女は自分が子どもだって、とても寂しそうでした。

俺と水族館に行ったときだって、こうやって喜ぶのは私だけなのかなって気にしてて・・・俺は俺もとっても楽しいって言ったんですけど、彼女はもう自分だけが騒ぐのはやめるって言ってました。」


「そんな・・・。すまない・・・が祥子が付き合ってる友達とか先輩の連絡先を教えてくれないかな。」


「俺も親しい人は知りません。ただ、うちのまどかにも何も言ってきてないっていうのが少しひっかかります。
まどかにはよくメールとか来るらしいけれど、ぜんぜんふだんとかわりないって言ってたから。
どこかに隠れているか、気晴らしに出かけてる程度じゃないかとも思われますが・・・。」


「そっか・・・。ごめん、もし祥子が見つかったら連絡をください。
お願いします。」

(俺は祥子のことを何もわかってなかったのかもしれない・・・。
俺は好かれてるんだから・・・なんて自惚れもいいところだ。
あんなに泣かせてしまうし・・・10年の間に祥子はどんな成長をみせたんだろうか・・・。)


『雪ちゃんってかっこいいよ。
祥子は雪ちゃんのお嫁さんになる。絶対、ぜ~ったいなるんだもん。
雪ちゃんは祥子のこと嫌い?嫌いじゃないよね。

祥子ね・・・雪ちゃんが笑ってくれないと悲しくなるの。
雪ちゃんが祥子に怒ったら、死んでしまう気がするの。』


「くそっ!」