祥子が雪貴といっしょにホールに行ってみると、陽子が笑顔で2人を迎えた。


「お久しぶりね。祥子さんは雪貴さんのところに身を寄せてたってことよね。
雪貴さんもスキャンダル好きなんだから。
いくら親は違っても姉の次は妹なの。
ほんとに困った人。ほほほほ。」


「お姉様、違います。
雪貴さんはお母様の依頼で私を下宿させてくださっただけです。
家の事業がうまくいってないのでしょう?
だから、口減らししなきゃいけない。」


「な、何のことかしら?
家も会社もうまくいってるわ。
あなた頭の中までおかしくなっちゃったんじゃないの?」


「そう?私の思い違いならそれにこしたことはないんだけど。
私はお姉様と違って雪貴さんを困らせるようなことはしないわ。」


「あら、言ってくれるじゃないの。
あんたなんか、またお兄様のお友達にいっぱい遊んでもらえばいいのよ。
ふふふっ。」


すると、突然白い煙があたり一面覆い隠すようにたちはじめ、祥子の叫び声がした。


「きゃあ!!!ゆ、雪貴さん!たすけ・・・て。
い、いやぁああ!!」


「祥子っ!どこだ。
祥子ぉぉぉ!くそっこんなところで、また・・・祥子を奪われるなんて!」


部屋の中が見えるようになったときには、床に這いつくばった雪貴だけが取り残されていた。

しかし、雪貴はすぐに携帯電話に手をかけ、ボディガードたちに連絡をいれる。


「う・・・そ・・・だろ。
連絡がとれないだと・・・。

なぜだ・・・くそぉ!妨害されてる・・・なんて・・・なんてことを。」


雪貴はすぐに貴文を捜して報告した。

そのとき、貴文も悲しげな表情をして突っ立っていた。


「どうしたんだ?兄さん・・・。」


「やられた・・・志奈子さんも誘拐されてしまったんだ・・・。
俺たちはマークされてた。

あとは信頼できるうちの部下たち次第ということになる。」


「どういうことなんだ?」


「こういうことも起こりうるかもしれない・・・と思ってな、水野と打ち合わせしておいた。
もし、連絡が途絶えた場合には水野が指揮をとって情報収集してほしいと頼んでおいたんだ。

おそらく、早く気づいてやってくれると思うんだが・・・。」


「そうか・・・水野なら・・・きっと祥子を捜してくれるだろうけど・・・でも。」


「悪い方向に考えてはダメだ。
同じ手にはもう乗る気はない。
夏生のせこいスケベ技にはまるほど、こっちはバカじゃないさ。」


「兄さん。とにかく志奈子さんも祥子もここにはいないなら、俺たちもここから早く出よう。」


「そうだな。その前に・・・ちょっといただいてくるものがあってな。
そいつをいただいてからだ。」


「兄さん。いったい何を?」


「ここの主催者にいいものを譲ってもらえることになっているんだ。
じつは、そいつは俺の小学校時代の親友でな・・・ふふふ。」


「そ、そういうことだったのか。さすがだな、兄貴は。」