祥子は混乱していた。
家が大変な状況なのにどうして、自分だけが教育を受けるとか援助される立場になるのか?

今も兄と姉は家のために頑張ってくれている。
だったら、兄弟すべて援助されるべきじゃないのか?

そして貴文は母と結婚したいわけだから、なおさら家族みんなを助けてくれるべきではないの?


「どうして・・・どうして私だけがここにいるの?
お母さんを呼んで告白しないんですか?

どうして兄と姉は助けられないの?」


「それはねぇ・・・祥子ちゃんの記憶がもどればすぐにわかることなんだ。
悪いけど、今、俺たちが君に説明するわけにはいかない。

君を援助したいと願うのは雪貴の嫁さんになってもらうって理由もあるけど、ずっと前から・・・そう、君の親父さんと俺たちの親父と俺たちでの約束みたいなもんだ。

だからね、雪貴が嫌いだ!って叫んでも立派な社会人になってもらうよ。」


「えっ?どうして・・・。
だって雪貴さんのお嫁さんにならなければ、私は自分で・・・。」


「おぃ、いつから君は俺の嫁になりたくないと思うようになった?」


「いつって・・・だって、雪貴さんのお嫁さんになりたいなんて言ったことの方が信じられないんだもん。
そんなこと言ったおぼえはないんだから。」


「なっ・・・どうしてそんなことになってしまったんだ。
あんなに俺の嫁さんになるって宣言してたのに!

まさか、俺との年の差に気づいてびびったのか?」


「雪貴さんっておいくつなんですか?
すごく大人って感じがします。」


「あ・・・ま、マジか。
今それ言う?
かなりそれ気にしてるんだけど・・・でも、君が俺の嫁さんになりたいっていうから俺は・・・。
いや、俺がロリコンだとそしられることも覚悟してたけど。

27だ・・・君とは10コ離れてる。」


「そ、そんなに違うのに・・・私はあなたのお嫁さんになりたいなんて言ってたんですか。
あ、でも10年前ならお子様ですよね。

きっと子どもの夢ですよ。
うん、きっとそうです・・・気にしないでください。
私がそのことで雪貴さんを縛っていたのならいい機会ですから、ここから自由です。」


「祥子・・・なんて残酷なことを言い出すんだ!
そ、そりゃ、俺も女性と付き合ったことがないわけじゃないし、GFはけっこういたけど、妻になる女性は君だと決めていたから、女性との間に失敗とかこじれたことは絶対起こさなかった。

それを君は・・・いとも簡単に今から自由だなんて・・・!」


「す、すみません!!
でも、覚えてないんですもん。
ごめんなさい、ごめんなさい。
それに私は・・・男性って意識したことなかったし、高校だって女子高だったし、まずは学問と就職を考えて。」


「就職だって?」