雪貴がそんなめにあわされていたなんて、ぜんぜん知らずにいた祥子だった。

会うこともなくなって、接点なんてなくなってしまったとばかり思っていたのに、陽子お姉さんとそんなことになっていたなんて・・・。


「わかりました。
雪貴さんは私が守ります。
陽子お姉さんと接点をもたないようにして、部屋にもいれないようにすればいいんでしょう?」


「そういうことだ。で、祥子ちゃんに頼みがあるんだけど・・・」


「何ですか?」


「その日はパーティー会場にもなっているホテルに泊まることになっているが、雪貴の部屋で祥子ちゃんが寝てくれないかな?」


「私だけですか?」


「いや、雪貴といっしょだけど。
ベッドは補助ベッドをいれるから雪貴にはそっちで寝てもらえばいいからさ。」


「えっ!!で、でも・・・同じ部屋で補助ベッドなんていっても2人でなんて・・・。」


「2人じゃないさ。俺の相棒がおじゃまさせてもらうから、かわいがってやってくれ。
ブルドッグの諭吉っていうんだがね。
なかなか慣れてくると、表情や動作がおちゃめなんだよ。
それでいて、諭吉はとても頭がいいんだ。
きっと祥子ちゃんのことも守ってくれるさ。」


「へえ、楽しみ。私もそんな相棒ほしい!
諭吉に会うのが楽しみだわ。」


「兄貴、そこまでして弟の愛情が信じられない?」


「信じてないわけじゃないけどな・・・祥子ちゃんの幸せが志奈子さんの幸せでもあるからね。」


「な、なるほどね・・・。で、ほんとの任務は何?」


「夏生と陽子が客に何を頼むか?
最近どうも、あの2人は俺たちのテリトリーを荒らしてるふしがあるんだ。
まぁ、俺はあいつらには負けないがな。

けど、志奈子さんを人質にとられてしまうと・・・俺は。」


「大丈夫さ、志奈子さんは俺が説得する。
そろそろ兄貴のところに行ってもらわないとな。」


「すまないな。」


「気にするなって。俺たちは仲のいい兄弟だろ。
兄嫁であって義母さんにもなってもらわなきゃならないんだから、ここががんばり時だ!」


そして、祥子は休日に雪貴と服やアクセサリーなどの買い物に出かけた。

「あの・・・2人で出かけてもいいんですか?」

「ああ、君の記憶がもどったからね。」

「でも、完全ってわけじゃないし・・・。」


「どうした?いっしょに出かけるのは嫌か?」


「だって・・・。」


「ん?」


「(きっと兄妹か、愛人のひとりにしか見えないわ。
雪貴さんは実業家で、私は女子高生だもの。)」