雪貴は祥子の母、志奈子から祥子のことを頼まれたこと。
そして、桧谷夏生と陽子の経営がうまくいっていないこと。

以前、夏生が金策に困っていた電話を祥子にきかれてしまったことから、祥子をエサに知り合いの若い実業家の息子たちから金をせびろうとしたこと。
結局、それは志奈子を暴行した現実から慰謝料としてとりあげたことなど、雪貴は祥子に話した。


「お母さんが・・・私を助けてくれた。
私のせいで・・・お母さんが・・・。」


「ごめん、俺たちが突撃したときは君のお母さんは・・・。
貴文兄さんが逆上して、それをとめるので精一杯だったんだ。

警察官に君をお願いするしか、あのときはどうしようもなかった。
俺も、まだ若くて何ていったらいいのか悩んで・・・そしたら、君の記憶がなくなってしまってて・・・。
俺のこともわからなくなって。

けど、俺を思い出して君が傷つくなら俺ごと忘れてしまっていた方がいいのかもしれないって思って。
様子だけ使用人から伝えてもらっていたんだ。
でも、まさか環とこんなことになるなんて。」


「私もびっくりしちゃったけど、環さんは普通に優しかったし、寮にいたときもみんな優しかったから、きっと私もいけない空気を作ってしまってたんだと思う・・・。」


「バカ!俺が来るのが遅かったらだなぁ!
今度こそ、君は・・・いや、まさか・・・環とならいいと思ったのか?」


「そ、そんなこと!勉強は教えてもらったけど、そんなの思ってないわ。」


「勉強なら俺が教えるからっていったろ!」


「だって、記憶がもどってないんだもの。
あんまり教えるって押し売りされると、何かあるんじゃないかって怖かったんだもん。」


「うぐっ!あの・・なぁ。
そんなに押し売りしてたかな。
俺は君がちっちゃい頃からいろいろ教えてあげたから・・・それで・・・。」


「ごめんなさい、だって、私からみれば雪貴さんは大人で、実業家でお金持ちで怖かったんだもん。」


「はぁ・・・おっさん扱いかよ。
まぁ、そこはしょうがないけど・・・けど、祥子がずっと俺を追いかけてきてたんだからな。」


「あんまりそのへんも思い出せなくて・・・。だって雪貴さんとはもう会えなくなったんだって思ってたから。」


「あれ、俺のことを思い出してたってことかい?」


「違うの。私をお世話してくださった方にいろいろ話をきいたの。
助けにきてくれたことも、小さい頃にご近所に住んでて、しょっちゅう雪貴さんのうちへ行ってたこともきいてたの。
でも、事件のあとは私には何も連絡がなくて、私は汚い子だから嫌われたんだと思ってた。」


「汚いわけないだろ!ごめん、忙しさに逃げてて、どういって会えばいいか悩んでいたんだ。」