すると、明央の視線が冷たくなって

「おまえの親戚って佐伯雪貴なのか?」


「え、ええ。」


「さっき管理者にいうって話しただろ。
学生寮の管理者は 学長の佐伯雪貴だ。」


「あっ!!・・・」


「そうか、学長は女だとわかっていながら編入させたんだな。
そしたら、報告するまでもないな。
ってことは、こんなことしても・・・通報者がいなければいいんだ。」


明央は祥子を押し倒して抱きしめた。


「きゃっ!や、やめてください。」


「心配すんな。一線はまだ超えないから。
抜け殻になって帰ってきたら女神がそこにいたから救われたくなったんだ。」


「抜け殻?・・・(あ、好きなひとのお葬式に出てきたんだ。)」


「ごめん、もう少しだけ、このままでいさせてくれないか。」


「つらかったんですね。」


「い、や・・・もう吹っ切れてたよ。
ただね、幸せだったはずの兄貴がとても気弱になってて見ていられなかった。

兄貴が彼女を必死で愛してたのはわかってたから、俺はおめでとうといったけど、葬式のときは慰めてやる言葉も何も出てこなかった。
兄貴のそばにいてやるのも今はできないと思った。

少し間を置いてから、兄貴のとこへは行ってこようと思うんだ。だめかな。」


「いいと思います。
先輩だって傷ついているんじゃないですか。」


「俺はそんなことないよ。
佐伯が君をここに入れたという話の方がショックだったくらいさ。」


「はぁ?」


「あ、今のは聞かなかったことにしてくれ。
ほんとの名前はなんていうんだ?」


「祥子。桧谷祥子です。
ひたにしょうこ?・・・あれ、もしかして・・・最近、誘拐なのか失踪なのかわからないけど桧谷家から消えたっていうお嬢様?」


「そんなニュースがあったんですか?」


「おぃ・・・おまえんちテレビないのか?
はっ・・・そっか。
佐伯がわざと見せずに。
ってことは誘拐されたのか。」


「たぶん・・・。でも佐伯さんから無理やりじゃないんです。
取引っていうか。お願いっていうか。

私の家の事業がうまくいってないらしくて、いろいろと秘密があるらしいんですけど、今事業を主にやっているのは私の腹違いの兄と姉なんですが、母と血のつながりがあるのは私だけで、母の財産を相続するのに今のままじゃ、会社もつぶれて借金を私が押し付けられるとか・・・なんとか。

それで貴文さんと雪貴さん兄弟で私の家のことを調べてくれているんです。
だから私はここにかくまわれて・・・先輩と同じ部屋に。」


「そういうことだったのか。
わかった。じゃ、俺もおまえを守る。
それに・・・おまえが女の子だったのはかなりうれしいしな。」


「はぁ?」


「俺、もしかしたら女みたいな男に気持ちが向いてしまったんじゃないかとか・・・ちょっと悩んだんだ。
それでこの前、親戚のうちから帰ったおまえの体型で胸のあたりがふんわりしてる気がして・・・ますますいけないと思いながらどうやっておまえに触れてやろうかと思ってたんだ。」


「だ、だめですってば。
私・・・男性の免疫なんてぜんぜんなくて。困ります・・・こんなの。」