-空の頑張り-


空のギプスが取れた日の夜、家族で食事に出かけた。

空が食べたいと言った豪華なお子様ランチのあるレストラン。


ギプスがなくなっているのに、まだギプスがついている時の癖が抜けなかった。

「あ、そっか。もうないんだ」

何度もそう言って、ギプスがないことを確認して足を動かしてはまた忘れて。


この小さな空にとって、長い長い日々だったんだ。



「よく頑張ったね」

私がそう言って頭をなでると、生意気にその手を振り払った空はこう言った。

「ママも頑張ったね」

抑えることのできない涙がポロポロとこぼれ落ちて、空と先生はそれを見て、笑っていた。


これで、もとに戻るわけじゃないのはわかってる。

変わってしまったんじゃなく、空は成長してるんだ。

骨折がなかったとしても、いろんなことはあっただろうし、いつか反抗する日も来たはずで。



大きなハンバーグを前にした空は、慣れない手つきでフォークとナイフを持った。


「ナイフとフォーク、反対だぞ」

「いいもん」


早く食べたいのに、なかなかうまく切れない空を見て、私と先生は目を合わせて頷き合った。